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研究者は手計算をするか、せいぜい手回し計算機を使うしかありません。
そして、ほとんどの予測の試みが計算ミスで失敗に終わったそうです。 気候は、非常に多くの要素が複雑に絡み合った現象です。

明日の天気(気象)もなかなか正確に予報できませんが、地球規模かつ長期的な気候変化を予測するためには、膨大な計算をしなければいけません。 例えば、気温が上昇すれば海面から蒸発する水が増え、空気中の水蒸気が増えます。
そうすると雲が多くなり、太陽光がより多く反射されます。 その分、地表面を暖める太確かに、私が小学生から中学生だった80年代に愛読していた少年漫画週刊誌には、時々このような記事が載っていました。
近い将来また氷河期がやってくるので、人類は飢え死にするだろうというようなことだったと思います。 このように、気温上昇が最終的に気温低下という逆の結果をもたらすようなことを、「負のフィードバック」と言います。
負のフィードバックばかりならば地球の気温は安定的に保たれて良いのですが、気温の上昇がさらなる気温上昇をもたらすという「正のフィードバック」もあります。 例えば、気温が上昇すると雪や氷が溶けます。
その下にあるのは、雪や氷より暗い色をした地面か海水です。 地表面や海水面は雪や氷がなくなれば、より多くの太陽光を吸収します。
そうして地球はより暖まり、気温はさらに上昇します。 こうした正負のフィードバックが無数にからみあう中で、それぞれの要因がどの程度、気温を支配しているかを決めなければ、気候の予測(シミュレーション)はできません。
しかも、当たり前の話ですが、東京と南極では気温も雪の量も気流も、何から何まで違います。 地上を緯度と経度の線で格子(メッシュ)に切り分け、それぞれのメッシュをひとつの点として計算して予測を行なわなければなりません。
もちろんメッシュが小さければ小さいほどシミュレーションの精度は上昇しますが、その分計算量も増加します。 どこまで小さく切り分けられるかは、コンピュータの計算能力にかかってきます。

横浜市金沢区にある海洋研究開発機構地球シミュレータセンターには、世界最大級の規模を誇るスーパーコンピュータがあります。 2002年から運用が始められた地球シミュレータの成果のひとつが、地球温暖化に関する過去と未来の精密な計算です。
それまで計算されてきたメッシュの大きさは、大気では1辺が300km、海洋では1辺が100mほどもありました。 1辺100kmといえば、ひとつの県がすっぽりと収まってしまうくらいの大きさです。
それが地球シミュレータを利用することによって、大気の1辺を100km程度、海洋の1辺を200km程度まで小さくした、世界でも最高解像度の地球温暖化の計算を行なうことができるようになりました。 1辺200kmというと、東京23区が少しはみ出るくらい。
ずいぶん粗いように思えるかも知れませんが、地球上の全表面をカバーするのですから、それでも相当の計算量です。 2004年2月に東京大学気候システム研究センター、国立環境研究所、海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターの合同チームは、地球シミュレータを使った計算結果を発表しました。
これによって、寒冷化は太陽エネルギーの変動や火山活動などの自然要因だけでも説明がつくが、近年の温暖化については二酸化炭素の放出などの人為的な要因を考慮することによってのみ説明できることが示されました。 やはり最近の温暖化は、二酸化炭素が主要因であるということです。
気温が低下している地域もあり、温暖化はおきていない。 二酸化炭素よりも水蒸気や太陽活動の影響の方が大きい。
コンピュータによる将来予測など信じられない。 大気中二酸化炭素が増加しているのは海面から発生したもので、人為起源ではない。
エネルギー消費は人間の性だから止められない。 温暖化問題は原子力推進派やリベラル派の陰謀である。

京都議定書の目標を守っても、温暖化防止には殆ど意味がない。 貧困やエイズ対策の方が優先順位が高いし、温暖化対策は経済を破綻させる。
ところが、地球温暖化は実証することが難しい。 人類が二酸化炭素を放出し続けると24世紀終わりにはこうなる、と予測することはできます。
でも、それが正しいかどうかを確認することはできません。 人類が過去に似たような経験をしていれば類推から何か言えるでしょうが、今のような急速な温暖化の経験はないのです。
将来の話はコンピュータに頼らざるを得ませんが、コンピュータも完全ではありません。 2100年の地球の平均気温は1990年より3℃高くなっている、と予測されたのは1990年のことです。
それが2001年になると、1.4〜5.8℃上昇すると予測値が変更されました。 将来の予測には様々な不確定要因を考慮しなければいけないので、このくらいの幅はやむを得ないのです。
そして本当のことは、2100年になるまで確かめることができません。 ですから、コンピュータによる将来予測と水晶玉占いとはどこが違うのだという人もいます。
水晶玉との最大の違いは、シミュレーションは過去から現在までの膨大なデータに基づいて未来を予測しているところです。 それぞれのデータ間にどのような相互作用があるかについても、できるかぎりの精密な検討が行なわれています。
お望みの将来像を出すために、データに細工しているのではないかという人もいます。 けれども科学論文では、計算データと計算法をオープンにして、誰が追試しても同じ結果が出せるように示さなければいけません。

適当な細工をしても、いずれはしてしまうものです。 ただし、将来予測にはどうしても不確実性が伴います。
過去から現在までの変化が、そのまま将来に持ち越されるかどうかわかりません。 例えば、2050年の世界からどれだけの二酸化炭素が排出されているかを予測するためには、その時点の各国の二酸化炭素排出量を予測しなければなりません。
そのためには、各国の経済と人口を予測する必要があります。 来年の経済状況もわからないのに、数十年後の各国の経済をどうやって予測しろというのでしょうか。
技術もどんどん進歩して、エネルギー効率はどんどん良くなっています。 政治や政策意思決定者は、政治家です。
だから、環境を研究する科学者は、政治家と政治家を選出する国民に対して、「このままいくとこれほど悪いことが起きます」という将来予測と、「いまのうちにこういうことをしておかないといけません」という対策案を示さなければなりません。 どんなに高度で複雑なシミュレーションを行なっても、結果は政治家や市民が理解できる言葉で説明しなければならない。
これもまた難しい作業です。 研究者はシミュレーションの不確実性を知っていますから、真面目であればあるほど暖昧な話しかできないからです。
新聞やテレビ、雑誌などに、温暖化についていろいろ話は出ています。 海面が上昇する、台風が増える、白干越が頻繁に起きる、日本にもマラリアが再上陸する(昔、沖縄の八重山諸島にもマラリアがありました)などなど。

でも、どうもぴんときません。 そもそも、気温が何度上昇するかもよくわかっていないのですから、説得力のある絵が描けないのです。

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